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パートナーシップ制度とは?シニア事実婚カップルが知っておくべき可能性と課題 | シニアの再婚と事実婚に関する相談室

パートナーシップ制度とは?
シニア事実婚カップルが知っておくべき可能性と課題

2025.12.01

同性から異性へ、広がるパートナーシップ制度

2015年に東京都渋谷区と世田谷区で始まったパートナーシップ制度は、当初は同性カップルの関係性を公的に認証する制度として注目を集めました。しかし2025年現在、この制度は大きな転換期を迎えています。全国525の自治体に広がり、人口カバー率は92.7%に達しました。

そして最も注目すべき変化は、異性の事実婚カップルにもこの制度の適用が広がりつつあることです。特にシニア世代の事実婚を選択するカップルにとって、この制度がどのような意味を持つのか、そして何ができて何ができないのかを正しく理解することが重要になっています。

同性カップルから始まった社会変革の物語

パートナーシップ制度は2015年、東京都渋谷区と世田谷区で同性カップルのために始まりました。法律婚ができないカップルに対し、自治体レベルで関係性を公的に認証する画期的な試みでした。制度開始から約10年が経過した現在、全国525の自治体が導入し、「同性カップル専用」から「多様な家族のあり方を認める制度」へと進化を遂げています。

異性カップルへの適用拡大という新しい流れ

近年、パートナーシップ制度を異性の事実婚カップルにも適用する自治体が増えています。当初は同性カップルのみを対象としていた制度が、事実婚を選択する異性カップルにも門戸を開く動きが全国的に広がっているのです。なぜこのような拡大が起きているのでしょうか。

背景には、事実婚を選択するカップルの増加があります。推計では事実婚を選択している人々が成人人口の2〜3%を占めるまでになり、特に40代から60代の女性を中心に、姓の変更を避けたい、戸籍への記載を避けたい、家族関係の複雑化を回避したい、経済的独立を維持したいといった理由で事実婚を選択する人々が増えています。

自治体側も、同性カップルと異性の事実婚カップルが直面する社会的課題には共通点が多いことに気づき始めました。どちらも法律婚ではないために、公的サービスや民間サービスで「家族」として扱われないという問題を抱えています。そして何より、互いに深い信頼関係で結ばれ、生活を共にし、互いを支え合っているという実態において、同性か異性かという違いは本質的ではないという認識が広がってきたのです。

パートナーシップ制度で何ができるのか

パートナーシップ制度を利用することで何ができるようになるのでしょうか。まず理解しておくべき重要な点は、この制度には法的拘束力がないということです。あくまでも自治体が「このお二人はパートナーとして生活している関係です」と公的に認証するものであり、法律上の婚姻関係とは異なります。しかし、公的な認証があることで、実際の生活の中で様々な場面で「家族」として扱われやすくなります。

パートナーシップ制度で可能になること

医療現場での面会・同意

緊急時の病院での面会や、手術等の医療行為への同意を求められた際に、医療機関がパートナーを「家族」として扱う判断材料となる(法的強制力はないが、多くの医療機関が証明書を尊重)


公営住宅への入居

公営住宅の入居申請で配偶者として扱われる。制度を導入している自治体では、パートナーシップ証明書の保有者も同等の扱いを受けられる


民間企業のサービス利用

大手携帯電話会社の家族割引、航空会社のマイレージ家族サービス、保険会社の一部商品での受取人指定など(企業によって対応は異なる)


社会的認知の向上

周囲の人々、特に親族や友人に対して、二人の関係性を説明する際の公的な証明となる


行政サービスでの配慮

一部自治体で児童扶養手当、犯罪被害者支援などで配偶者として扱われる場合がある

ただし、これらは企業や機関の自主的な判断によるものも多く、すべてのサービスで自動的に利用できるわけではありません。

シニア世代の事実婚カップルにとっての意味

では、特にシニア世代の事実婚カップルにとって、パートナーシップ制度はどのような意味を持つのでしょうか。50代、60代で事実婚を選択する理由は若い世代とは少し異なります。多くの場合、既に一度結婚を経験しており、離婚または死別を経て新しいパートナーと出会ったケースです。前婚の子どもとの関係、相続問題の複雑化、姓の変更への抵抗感など、様々な事情が絡み合って事実婚という選択に至ります。

こうしたシニアカップルにとって、パートナーシップ制度の最大のメリットは「社会的認知」です。周囲の人々、特に親族や友人に対して、二人の関係性を説明する際の公的な証明となります。「婚姻届は出していないけれど、自治体から関係性を認められている」という事実は、特に保守的な価値観を持つ人々に対しても一定の説得力を持ちます。

医療現場での権利確保も、高齢になるほど重要性が増します。60代、70代となれば、入院や手術を経験する可能性が高まります。そうした緊急時に、パートナーが病院から締め出されることなく、面会でき、医師からの説明を聞き、必要な判断に関与できることは、精神的な安心感につながります。

また、公営住宅への入居を考える際にも、制度が役立ちます。年齢を重ねると、バリアフリーの住環境や、医療・介護サービスへのアクセスの良さが重要になります。パートナーシップ証明書があることで、公営住宅の入居申請において配偶者として扱われ、住まいの選択肢が広がります。

制度では解決できない最大の課題:相続と財産

しかし、ここで最も重要な現実を直視する必要があります。パートナーシップ制度には、シニア世代にとって最も切実な問題である「相続」と「財産承継」に関する法的効力が一切ないのです。

日本の民法は、法定相続人を明確に定めています。配偶者は常に相続人となり、子どもや親などと共に遺産を相続します。しかし、この「配偶者」とは法律上の婚姻関係にある者を指し、事実婚のパートナーは含まれません。パートナーシップ証明書を持っていたとしても、この法律上の地位は変わりません。

具体的に考えてみましょう。65歳の男性Aさんと62歳の女性Bさんが事実婚関係にあり、パートナーシップ証明書も取得していたとします。

Aさんには前婚の子どもが2人います。Aさんが亡くなった場合、法定相続人はこの2人の子どもだけです。Bさんには法定相続権が一切ありません。Aさんの財産が8,000万円あったとしても、何も対策をしていなければ、Bさんは1円も相続できないのです。
これは相続税の観点からも大きな問題を生みます。

法律婚の配偶者には「配偶者税額軽減」という非常に強力な税制優遇があり、最低でも1億6,000万円まで相続税が非課税となります。しかし事実婚のパートナーにはこの適用がありません。さらに、2020年に創設された「配偶者居住権」という制度も、法律婚の配偶者のみが対象で、事実婚のパートナーは利用できません。

住居の問題も深刻です。Aさん名義の自宅に二人で暮らしていた場合、Aさんが亡くなると、自宅の所有権は法定相続人である子どもたちに移ります。子どもたちが「自宅を売却して現金化したい」と主張すれば、Bさんは長年住み慣れた家から立ち退かなければならない可能性があります。

パートナーシップ制度では解決できない主な問題

• 法定相続権の不存在
• 配偶者税額軽減(1億6,000万円控除)の不適用
• 配偶者居住権の設定不可
• 遺留分権利者としての地位なし
• 年金の遺族給付の不確実性

制度の限界を補う実務的対策

では、パートナーシップ制度を活用しつつ、その限界をどう補えば良いのでしょうか。最も重要なのは、パートナーシップ制度を「社会的認知のツール」として活用しながら、法的・財産的な保護は別の手段で確保するという二段構えのアプローチです。

必須の法的対策

遺言書の作成(公正証書遺言)

「全財産をパートナーに遺贈する」と明記すれば財産を残せます。ただし、事実婚のパートナーは法定相続人ではないため相続税の2割加算が適用され、配偶者税額軽減(1億6,000万円控除)も受けられません。前婚の子どもには遺留分があるため、遺留分対策として生前贈与を組み合わせる場合は、贈与税の負担も考慮した計画的な対策が必要です。

• 家族信託の活用

認知症になった場合の財産管理や、死後のパートナーへの財産承継を信託の仕組みで実現できます。例えば、自宅不動産を信託財産として、パートナーが生涯住み続けられる権利を確保し、パートナーの死後は前婚の子どもに所有権が移るといった柔軟な設計が可能です。

• 生命保険の活用

パートナーを受取人に指定した生命保険に加入しておけば、保険金はパートナーの固有財産となり、遺産分割の対象にもならず、遺留分の計算にも含まれません。

ただし、事実婚のパートナーを受取人に指定できるかは保険会社によって異なり、パートナーシップ証明書の提示や同居・生計同一の証明が必要です。また、事実婚のパートナーは法定相続人ではないため、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)は適用されず、受け取った保険金全額が相続税の課税対象となります。

• 任意後見契約や医療同意に関する契約書の作成

判断能力が低下した場合に、パートナーに財産管理や医療判断を任せられるよう、法的に整備しておくことが重要です。パートナーシップ証明書だけでは、こうした権限は発生しません。

パートナーシップ制度の今後の展望と民間の動き

パートナーシップ制度自体も進化を続けており、特に民間企業での対応が拡大しています。2024年時点で約450社がパートナーシップ制度を持つカップルに対し、社内福利厚生を適用しています。住宅ローンのペアローン、生命保険の受取人指定、クレジットカードの家族カード発行など、金融サービスでの対応も進んでいます。こうした民間の動きが、社会全体の意識変化を促進しています。

    まとめ:制度を正しく理解し、総合的な対策を

    パートナーシップ制度は、同性カップルのために始まった制度ですが、今や異性の事実婚カップルにも広がり、多様な家族のあり方を社会が認める象徴となっています。シニア世代の事実婚カップルにとって、この制度は社会的認知を得るための有効なツールです。医療現場での権利、住居の確保、日常生活での様々な場面で、二人の関係性を公的に証明できることは大きな意味を持ちます。

    しかし同時に、この制度には明確な限界があります。相続権は発生せず、税制優遇もなく、配偶者としての法的地位は得られません。これらは日本の民法が「法律婚」を前提として構築されている以上、自治体レベルの制度では変えられない壁です。

    したがって、パートナーシップ制度を「社会的認知のツール」として活用しながら、相続・財産問題については遺言書、家族信託、生命保険、任意後見契約といった法的手段を組み合わせた総合的な対策が不可欠です。この二段構えのアプローチによって初めて、「関係性の公的証明」と「実質的な権利保護」の両立が実現できます。

    事実婚という選択は、決して不安定な関係ではなく、お互いの意思と信頼に基づいた成熟した選択です。そして適切な準備と対策を行えば、法律婚と同等、あるいはそれ以上に安心できる生活基盤を築くことができます。パートナーシップ制度は、その実現のための重要な一歩なのです。

    ソレイユ相続相談室では、お客様の状況に応じた最適なパートナーシップの形を一緒に考え、必要な法的サポートを提供しています。人生100年時代、新たなパートナーとの幸せな生活を実現するために、まずはお気軽にご相談ください。あなたの想いを形にする、最適な解決策を一緒に見つけていきましょう。

    よくある質問

    Q1: パートナーシップ証明書を取得すれば相続権が発生しますか?

    A: いいえ、パートナーシップ証明書を取得しても、法定相続権は発生しません。民法上の「配偶者」は法律婚のみを指すため、事実婚のパートナーは相続人とはなりません。財産を残すには、公正証書遺言の作成が必須です。ただし前婚の子どもなどには遺留分があるため、総合的な対策が必要です。

    Q: パートナーシップ証明書があれば病院での面会や医療同意は確実にできますか?

    A: 確実ではありませんが、証明書があることで医療機関が「家族」として扱う判断材料になります。多くの医療機関が証明書を尊重する傾向にありますが、法的強制力はないため、病院の方針によります。より確実性を高めるには、医療同意に関する公正証書を別途作成することをお勧めします。

    監修者

    宮澤 博

    税理士・行政書士
    税理士法人共同会計社 代表社員税理士
    行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

    長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、 お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、 他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。

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