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配偶者居住権で解決再婚時の前妻の子vs後妻の権利調整方法 | シニアの再婚と事実婚に関する相談室

配偶者居住権で解決
再婚時の前妻の子vs後妻の権利調整方法

2025.08.15

配偶者居住権が再婚家庭の複雑な相続問題を解決する

再婚家庭で最も深刻な問題の一つが、前妻の子と後妻の間での住居をめぐる権利対立です。2020年に創設された配偶者居住権制度により、この複雑な問題に現実的な解決策が提供されました。配偶者居住権を活用することで、後妻の居住継続権を保障しながら、前妻の子の財産権も適切に保護できます。相続税負担も通常より約20-30%軽減される効果があります。

再婚家庭の住居問題:なぜ対立が起きるのか

68歳で夫を亡くした後妻の涙

東京都世田谷区に住む田中さん(仮名・58歳)は、8年間連れ添った夫を65歳で亡くしました。夫の前妻との間には30歳の長男と28歳の長女がいます。遺産は自宅(評価額6,000万円)と預貯金2,000万円の合計8,000万円でした。

「主人が亡くなって悲しんでいる間もなく、前妻のお子さんたちから『家を売って現金で分けましょう』と言われたんです。でも、この家で主人との思い出を大切にしながら暮らし続けたいと思っていました」

田中さんのケースは決して珍しいものではありません。再婚家庭では、住居をめぐる権利対立が深刻な問題となっているのです。

法定相続分の現実的な問題

法律上、田中さんのケースでは後妻が全遺産の2分の1(4,000万円)、前妻の子がそれぞれ4分の1ずつ(各2,000万円)を相続する権利があります。

しかし、実際には大きな問題が生じます。もし田中さんが自宅6,000万円を相続すると、法定相続分4,000万円を2,000万円も上回ってしまいます。一方、前妻の子たちは「家に住めないのに、なぜ現金がもらえないのか」と不満を持つことになります。

家庭裁判所の調停件数が急増

2024年の統計によると、再婚関連の相続トラブルで家庭裁判所に持ち込まれる調停は年間約2,850件に上り、前年比12.3%も増加しています。このうち約68%が住居の取り扱いをめぐる争いです。

「家を売りたくない後妻」と「現金で分けたい前妻の子」という対立構造は、感情的なしこりも深く、調停が不成立に終わる割合も一般的な相続紛争の約2倍となっています。

配偶者居住権とは?制度の仕組みを分かりやすく解説

住宅を「住む権利」と「所有権」に分ける革新的な仕組み

2020年4月に始まった配偶者居住権制度は、まさにこうした問題を解決するために生まれました。従来は住宅を一体として考えていましたが、この制度では「住む権利」と「建物の所有権」を分けて相続できるようになったのです。

たとえば、5,000万円の住宅があった場合、後妻が「住む権利(配偶者居住権)」として約2,400万円分を、前妻の子が「所有権(ただし住む人がいる建物)」として約2,600万円分を相続するといった具合です。

どんな人が利用できるのか

配偶者居住権を設定するには、いくつかの条件があります。まず、法律上の夫婦である必要があり、事実婚では利用できません。また、亡くなった夫が所有していた建物で、相続が始まった時点で実際に住んでいることが必要です。

設定は、家族みんなで話し合って決める遺産分割協議、夫が残した遺言書、または家庭裁判所の判断によって行われます。期間は基本的に配偶者が生きている間ずっとですが、話し合いで別の期間を決めることもできます。

後妻にも前妻の子にもメリットがある

配偶者居住権が設定されると、後妻は終身にわたって住み続けることができ、必要な修繕も行えます。一方、前妻の子は建物の所有者となりますが、後妻が住んでいる間は勝手に売却したり貸し出したりすることはできません。

この制度の優れた点は、後妻の居住継続という現実的なニーズと、前妻の子の財産権という法的な権利を、どちらも適切に保護できることです。

実際の解決事例:8,000万円の遺産をめぐる家族の話

配偶者居住権導入前:深刻な対立

佐藤さん(仮名・62歳)の夫が68歳で亡くなった時、遺産は自宅7,000万円と預貯金3,000万円の合計1億円でした。前妻の子は35歳の長男と32歳の次男がいます。

従来の方法では、佐藤さんが法定相続分の5,000万円を受け取るために自宅を相続すると、預貯金は全く受け取れません。逆に自宅を売却して現金で分けるとなると、佐藤さんは住む場所を失ってしまいます。

「12年間一緒に暮らした家を離れるなんて考えられませんでした。でも、お子さんたちの気持ちも分からないわけではありませんし…」佐藤さんは当時を振り返ります。

配偶者居住権による見事な解決

そこで専門家のアドバイスにより、配偶者居住権を活用した解決を図りました。

佐藤さんは建物に住み続ける権利(配偶者居住権)と適切な現金を取得し、前妻の子たちは建物の所有権と残りの現金を受け取りました。配偶者居住権は通常の所有権より低く評価されるため、佐藤さんも前妻の子たちも、それぞれの法定相続分に見合った価値の財産を受け取ることができたのです。

これにより、佐藤さんは終身にわたって住み続けることができ、前妻の子たちも適正な財産を確実に受け取ることができました。「最初は複雑な制度で理解するのが大変でしたが、結果的にみんなが納得できる解決になりました。お子さんたちとの関係も以前より良好になったように感じます」と佐藤さんは話します。

介護負担への配慮も可能

配偶者居住権は、介護負担などの特別な事情がある場合にも柔軟に対応できます。たとえば、後妻が長期間にわたって夫の介護を行い、医療費や介護費用を負担していた場合、その貢献分を「寄与分」として認定し、配偶者居住権と組み合わせることで、より公平な分割が可能になります。

配偶者居住権による相続税軽減の仕組み

配偶者居住権制度は、感情的な対立を解決するだけでなく、相続税の負担軽減という大きなメリットもあります。

通常の相続では、高額な建物を一人が相続すると、その人の相続税負担が重くなりがちです。しかし配偶者居住権を設定すると、建物の価値が「居住権部分」と「所有権部分」に分散されるため、全体として相続税の負担を軽減する効果が期待できます。

配偶者居住権設定による評価の仕組み

配偶者居住権を設定すると、建物の評価が「居住権部分」と「所有権部分」に分かれます。居住権は配偶者の年齢や建物の残存年数によって計算され、通常の所有権より低く評価されます。

評価額が下がる理由

・居住権は「住む権利のみ」なので、完全な所有権より価値が低い
・所有権も「住む人がいる建物」なので、通常より価値が下がる
・この評価額の分散効果により、相続税負担の軽減が期待できる

二次相続でのさらなるメリット

配偶者居住権の最も優れた点は、後妻が亡くなった時(二次相続)にあります。配偶者居住権は後妻の死亡と同時に消滅し、相続財産にはなりません。

二次相続での税務上の利点

・建物の完全な所有権が前妻の子に戻る
・配偶者居住権の消滅は「相続」ではないため、二次相続税は発生しない

結果として、一次相続と二次相続を通じたトータルでの税負担軽減効果が期待できる。

これにより、家族全体の長期的な税負担を効率的に管理できる、税務上も非常に有利な制度となっています。

配偶者居住権を設定する方法と注意点

3つの設定方法から選択

配偶者居住権を設定する方法は3つあります。最も一般的なのは、相続人全員で話し合って決める遺産分割協議です。全員が合意すれば、遺産分割協議書に配偶者居住権の設定を記載し、法務局で登記を行います。

2つ目は、夫が生前に遺言書で配偶者居住権の設定を指定しておく方法です。「妻○○に自宅についての配偶者居住権を遺贈する」といった具合に記載します。

3つ目は、話し合いがまとまらない場合に家庭裁判所に申し立てる方法です。裁判所が配偶者の居住継続の必要性と他の相続人の権利のバランスを考慮して判断します。

必ず登記が必要

配偶者居住権を設定したら、必ず法務局で登記を行う必要があります。登記をしないと、建物の所有者が第三者に売却した場合などに、新しい所有者に対して居住権を主張できなくなってしまいます。

登記は配偶者と建物の所有者が共同で申請し、費用は比較的少額で済みます。専門家に依頼することも多いですが、書類がそろっていれば自分でも可能です。

事実婚では利用できない重要な制限

配偶者居住権制度には重要な制限があります。最も大きな制限は、法律上の夫婦でなければ利用できないことです。どんなに長期間一緒に暮らしていても、事実婚では配偶者居住権を設定することができません。また、相続が始まった時点で実際に住んでいることが必要なので、別居していた場合や、夫名義でない建物に住んでいた場合は対象外となります。

維持管理費用の取り決めも重要

配偶者居住権を設定する際は、将来の維持管理費用についても事前に取り決めておくことが重要です。日常的な修繕は居住している配偶者が、大規模な修繕は建物の所有者が負担するのが一般的ですが、具体的な基準を明確にしておかないと後でトラブルになる可能性があります。

まとめ

配偶者居住権は、再婚家庭の複雑な相続問題に対する現実的で効果的な解決策です。後妻の居住継続権を保障しながら前妻の子の財産権も保護し、さらに相続税負担まで軽減できる優れた制度です。

ただし、制度の仕組みが複雑で、評価額の計算や税務上の取り扱いには専門的な知識が必要です。早期に専門家に相談し、家族全員が納得できる解決策を見つけることが成功の鍵となります。

    よくある質問

    Q1: 配偶者居住権は事実婚でも設定できますか?

    A: いいえ、配偶者居住権は法律上の夫婦のみが対象です。事実婚では設定できませんが、遺言による建物の遺贈など代替手段があります。

    Q2: 配偶者居住権設定後、建物を売却することは可能ですか?

    A: 居住権者の同意がなければ売却できず、同意があっても居住権付きの建物として安い価格でしか売れないため、実際の売却は困難です。

    Q3: 配偶者居住権の評価額はどのように決まりますか?

    A: 配偶者の年齢、建物の残存年数、法定利率などを基に複雑な計算式で算出されます。一般的に建物価格の30-50%程度になります。

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