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相続税改正でシニア再婚はどう変わった?生前贈与7年ルールの影響 | シニアの再婚と事実婚に関する相談室

相続税改正でシニア再婚はどう変わった?生前贈与7年ルールの影響

2025.10.01

生前贈与が3年から7年に!相続対策の進め方が大きく変わりました

2024年1月から相続税のルールが大きく変わりました。これまで相続の3年前までに行った生前贈与が相続税の計算に含められていましたが、これが7年前まで延長されたのです。この変更により、相続対策を検討するシニア世代は従来よりも長期的な計画が必要となりました。

何が変わったの?2024年相続税改正のポイント

高齢化が進む日本では、社会保障費がどんどん膨らんでいます。政府はその費用を賄うため、また富裕層と一般の方の格差を是正するため、相続税のルールを見直しました。

これまで日本の生前贈与のルールは欧米と比べて甘く、「3年前まで」というのは短すぎるという指摘がありました。そこで国際的な水準に合わせて、7年前まで遡るようになったのです。

主な変更点

最も重要な変更は「生前贈与加算期間の延長」です。これまでは亡くなる3年前までに行った贈与が相続税の計算に含まれていましたが、これが7年前までに延長されました。

ただし、いきなり7年にするのではなく、段階的に変わっています。2024年に亡くなった方は4年前まで、2025年は5年前まで、2026年は6年前まで、そして2027年からは完全に7年前までが対象になります。

また、4年前から7年前までの贈与については、生前贈与加算の軽減措置として合計100万円までは相続財産に含めなくてよいという配慮もされています。

シニア世代への影響

この変更により、相続対策を行うシニア世代には大きな影響があります。従来は「相続が発生する前3年間の贈与は相続財産に加算される」というルールでしたが、これが7年間に延長されました。つまり、生前贈与による相続税対策を行う場合、より長期的な計画が必要になり、専門家のサポートもこれまで以上に重要になりました。

そもそも生前贈与加算って何?

多くの方が「贈与したのに結局相続税がかかるなら意味がない」と勘違いされていますが、実はそうではありません。

「生前贈与加算」とは、亡くなった時に、生前に行った贈与を相続財産に「足し戻して」相続税を計算することです。ただし、これは「贈与が無かったことになる」という意味ではありません。

具体例

お父さんが亡くなる2年前に、息子さんに200万円を贈与したとしましょう。贈与の時は基礎控除の110万円を超えているので、90万円に贈与税がかかりました。
お父さんが亡くなった時、この200万円は相続財産に足し戻されて相続税が計算されます。しかし、既に払った贈与税90万円は相続税から控除されるので、二重に税金を払うことはありません。

生前贈与加算と贈与税額控除の関係

生前贈与加算と贈与税額控除は、相続税と贈与税の二重課税を防ぐための関係にあります。生前贈与加算によって相続財産に加算された贈与財産について、すでに支払っている贈与税額を相続税額から差し引くのが贈与税額控除です。
この2つの制度は、暦年課税相続時精算課税のそれぞれで適用されるルールが異なります。

 

暦年課税と相続時精算課税の違い

項目

暦年課税

相続時精算課税

基礎控除

年間110万円

年間110万円(2024年改正)

税率

10%〜55%(超過累進税率)

一律20%

特別控除額

なし

累計2,500万円まで贈与税が非課税

相続時の取扱い

相続前7年以内の贈与財産は相続財産に加算

贈与財産は年数に関わらず相続財産に加算して相続税を計算

適用対象者

誰でも

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫

選択の撤回

毎年選択可能

一度選択すると暦年課税へは戻れない

届出

不要

必要

暦年課税の場合
暦年課税制度は、1年間の贈与額が110万円の基礎控除額を超える場合に贈与税が課税される仕組みです。

• 生前贈与加算
2024年1月1日以降の贈与から、相続開始前7年以内の暦年贈与が相続財産に加算されることになりました。

• 贈与税額控除
生前贈与加算の対象となった贈与財産については、すでに納付済みの贈与税額を相続税額から控除できます。

• 控除しきれない贈与税
暦年課税では、贈与税額控除を適用しても相続税額から引ききれなかった贈与税額(控除不足額)は還付されません。

 

相続時精算課税の場合
相続時精算課税制度は、年間110万円の基礎控除に加えて、累計2,500万円までの特別控除があり、これらの控除を超えた贈与について20%の贈与税を支払う仕組みです。
相続時(贈与者が亡くなった時)に基礎控除額(年間110万円)を超えた贈与分は、相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

• 生前贈与加算
相続時精算課税制度を適用した生前贈与は対象外です。

• 贈与税額控除
相続時精算課税制度の対象となった贈与財産に、贈与税が課税されていた場合には、その贈与税を相続税から控除できます。

7年ルールになってもメリットはある

期間が延びても、生前贈与のメリットはあります。
まず、財産を早めに渡すことで、その後の値上がり分は相続財産に含まれません。例えば200万円の株を贈与して、それが300万円になっても、増えた100万円は相続税の対象外です。

また、相続人が事前に財産をもらうことで生活が安定し、いざ相続が起きた時の話し合いもスムーズになります。7年間という長期間で計画的に贈与しないと節税効果は期待できないようになったので、考えようによってはより多くの財産を事前に移すことができます。ただし、7年以内に相続が発生した場合は贈与分も相続税の対象となるため、従来のような直接的な節税効果は期待しにくくなりました。

シニア再婚の相続対策はどう変わった?

従来の対策の限界が明確に

これまでシニア再婚では、再婚後に相続対策を始めても3年間の猶予がありました。つまり、再婚してから前の結婚での子どもたちに年間110万円ずつ贈与を開始し、その3年後以降に相続が発生すれば、贈与した分は相続税の軽減効果があったのです。

例えば、再婚後に前妻の子2人に年間110万円ずつ3年間贈与すると、合計660万円について相続税の軽減効果が期待できました。

新しいルールでは後手に回ると効果が限定的

改正後は、相続発生時から7年前までの贈与が相続税の計算対象となります。つまり、再婚してから贈与を始めた場合、その効果を十分に活かすには7年間が必要です。

前妻の子2人に年間110万円ずつ7年間贈与すると、合計1,540万円の贈与が可能ですが、7年以内に相続が発生すれば、結局その贈与分も相続税の対象となってしまいます。

実際の影響

65歳男性で総財産1億2,000万円、相続人が新しい奥さんと前妻の子2人というケースで考えてみましょう。
従来のルールでは、再婚後に3年間の贈与を行えば、その後の相続で軽減効果がありました。新しいルールでは、同じような効果を得るには7年間の期間が必要となり、その間に相続が発生するリスクも考慮しなければなりません。

これまでは再婚が決まってから相続対策を考える方が多くいましたが、7年ルールへの改正により、日頃からの相続対策がより重要になりました。

現実的なアプローチ

日常的な相続対策:7-8年間の長期計画で生前贈与を実施
再婚する場合:既存の相続対策を再婚に合わせて調整・最適化

つまり、「再婚がきっかけの相続対策」ではなく、「普段から相続対策をしておき、再婚時に見直す」という考え方に変わったのです。

配偶者居住権で家の問題も解決

配偶者居住権は2020年にできた新しい制度で、亡くなった方の配偶者が住み慣れた家に住み続けられる権利を保障するものです。

従来は家を相続すると、その評価額が相続財産の大部分を占めてしまい、現金などの他の財産をあまり相続できませんでした。配偶者居住権を使うと、家の権利を「住む権利」と「所有する権利」に分けることができます。

配偶者居住権については、こちら(過去の記事)をご覧ください。

これからの新しい相続対策

計画的な相続対策が重要に

7年ルールへの改正により、相続対策全体をより計画的に行う必要があります。

従来は、再婚後に相続が発生しても、その3年前までに行った贈与であれば相続税の軽減効果がありました。つまり、再婚してから対策を始めても十分だったのです。

しかし現在は、このような短期間での対策では十分な効果が得られません。そのため、日常的な相続対策を継続的に行い、再婚時にその内容を調整・最適化するというアプローチが必要になりました。
シニア世代の方は、ある程度の年齢から、継続的な生前贈与を検討されることをお勧めします。

いろいろな方法を組み合わせる

基本となるのは年間110万円の贈与ですが、それ以外にも教育資金贈与(孫の教育費として最大1,500万円)、住宅取得資金贈与(家を買う資金として最大1,000万円)などを組み合わせることができます。

事実婚の方の対策

事実婚を選択した場合、法的な結婚と比べて税制上の優遇が受けられません。配偶者税額軽減(1億6,000万円まで相続税なし)も使えません。

そのため、遺言書での財産承継、生命保険の活用、積極的な生前贈与、家族信託による財産管理などを組み合わせた総合的な対策が必要です。

まとめ:長期戦略でより確実な相続対策を

2024年の相続税制改正により従来の対策の見直しが必要となりました。効果的な財産承継のためには早期からの計画開始、複数の制度を組み合わせた総合的なアプローチ、専門家との連携、そして定期的な戦略の見直しです。

    よくある質問

    Q1: 既に3年間の生前贈与を始めていますが、無駄になりますか?

    A: 無駄になりません。これまでの3年間の贈与に加えて、さらに4年間継続することで、より多くの財産を事前に移転できます。7年間という長期間での計画的な贈与により、相続財産を効果的に減らすことが可能です。ただし、7年以内に相続が発生した場合は贈与分も相続税の対象となるため、従来のような直接的な節税効果とは異なる点にご注意ください。

    Q2: 事実婚の場合、2024年改正の影響はありますか?

    A: 事実婚では使えない特例があるため、元々相続税負担が重い状況です。2024年の改正による直接の影響は少ないですが、遺言書作成と合わせて、生前贈与計画の見直しをお勧めします。

    監修者

    宮澤 博

    税理士・行政書士
    税理士法人共同会計社 代表社員税理士
    行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

    長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、 お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、 他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。

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